一覧に戻る

コラム

上顎のインプラントが難しい理由

2024/5/20

上顎のインプラントが難しい理由

インプラントはブリッジや入れ歯とどう違う?のコラムでもお伝えしたとおり、インプラントは失ってしまった歯を補うのにとても優れた治療法です。自然な噛み心地と、違和感のない美しい見た目を手に入れられるインプラントには、他の治療法にはないメリットがあります。

そんなインプラント治療ですが、上顎の歯と下顎の歯、どちらに対しても行うことができるものの、実は難易度には違いがあり、同じ人でも上顎の歯の方が難しい傾向があるのです。

今回は、なぜ上顎のインプラント治療が難しいのか、その理由についてお話ししたいと思います。

上顎骨と上顎洞


上顎洞

上顎骨(上顎の骨)には、インプラント治療は誰でも受けられる?…実は避けた方が良い場合もありますのコラムで解説した上顎洞(じょうがくどう)が存在しています。

上顎洞とは上顎骨、鼻、目で囲まれた骨の空洞であり、ちくのう症になった時に膿がたまるところですが、健康な状態では空気で満たされています。下顎骨の周囲にはこのような骨の空洞はありません。

上顎骨の形や骨の性質


上顎骨の形や骨の性質

上顎洞の底になるのが上顎骨なのですが、上顎骨の形状は平らではなく複雑です。そして上顎骨の厚みは一定ではなく、前から6番目の歯である第一大臼歯のあたりが最も薄く、前に行くほど厚みが増していきます。

ちなみに、薄い箇所はどれくらい薄いかというと、第一大臼歯の根の先が上顎洞に飛び出ているケースがあるほどです。一方、下顎骨の場合、骨の厚みにそれほど差はありません。

また、同じ顎の骨でありながら、上顎骨と下顎骨とでは硬さにも差があります。

骨は、表面部分の硬い緻密骨(ちみつこつ)と、内部のスポンジのように空洞が多い海綿骨(かいめんこつ)で作られていますが、上顎骨は海綿骨の占める割合が高く、反対に下顎骨は低くなっており、一般的に上顎骨はやわらかく、下顎骨は硬いという特徴があります。

上顎のインプラント治療が難しい理由

上顎ならではの構造や特徴をお話ししたうえで、ここからは、上顎のインプラントが難しい理由について解説していきましょう。

インプラントの固定が難しい


インプラントの固定が難しい

インプラント治療を受けるということは、すでに歯がなくなっている状態です。歯の周りの骨は、歯を支えるためにあるので、歯を失うと必要がなくなり、少しずつ減っていってしまいます。

お伝えしたように、もともと上顎の奥歯あたりの骨の厚みは、上顎洞があるため薄いのですが、歯がなくなるとさらに薄くなります。

骨の厚みが薄いと、インプラントと骨の結合が不十分になりやすく、インプラントをしっかり固定することが難しくなってしまうのです。

また、これもお話ししたように、上顎骨は海綿骨の割合が多いやわらかい骨です。やわらかい骨はインプラントを固定するのが難しく、それだけ安定性も下がってしまいます。

上顎洞に関するリスク


上顎洞に関するリスク

インプラントの固定力を増やしたいなら、少しでも深くインプラントを入れることが望ましいと言えます。しかし上顎骨の場合、ドリルを深く入れ過ぎると、上顎洞の底を貫通して、上顎骨の中にインプラントが飛び出してしまうリスクがあります。

これに気づかず、さらに深くインプラントを埋入してしまうと、上顎洞にインプラントを落としてしまうこともあります。

また、インプラントが上顎洞に貫通したり、上顎洞の粘膜を傷つけたりすると、それが引き金となって上顎洞炎(じょうがくどうえん)という炎症を起こすことがあります。

上顎のインプラント治療への対処

上顎骨の厚みや硬さに加え、上顎洞についての問題もない場合は、そのままインプラント治療を行えますが、これらに問題がある場合は、適切な処置を行う必要があります。

インプラントを傾ける


上顎のインプラント治療への対処:インプラントを傾ける

通常、インプラントは垂直に埋め込みますが、垂直と斜めでは、斜めにする方が、長さが稼げるのがお分かりいただけると思います。

そこで、垂直にインプラントを埋めるのではなく、厚みのあるところを狙い、少し傾けてインプラントを埋入するという方法を採ることがあります。

これにより、垂直の場合よりも長いインプラントを埋め込むことができ、固定力が増します。ただ、傾けるというと簡単に聞こえますが、三次元的に傾けなければならないので、難易度が高いインプラント法になります。

ショートインプラントを選ぶ


上顎のインプラント治療への対処:ショートインプラントを選ぶ

斜めにインプラントを埋入するのが難しい場合、ショートインプラントを使用するという方法もあります。

一般的なインプラントの長さは10mm以上なのですが、ショートインプラントは、長さが8mm以下の短いインプラントです。上顎骨の厚みが10mmに満たないような場合に選ばれます。

骨造成(骨増生)手術(こつぞうせいしゅじゅつ)

骨造成(骨増生)手術(こつぞうせいしゅじゅつ)は、文字どおり人工的に骨を作って増やす手術であり、上顎骨の厚みを増す際に用いられます。骨造成(骨増生)手術にはいくつか種類がありますが、今回は代表的なものをご紹介しましょう。

サイナスリフト


サイナスリフト

サイナスは上顎洞のことで、サイナスリフトは上顎洞の粘膜と上顎骨の間に人工骨を入れる骨造成(骨増生)法です。

まず上顎の粘膜に切開を加え、上顎骨の側面を露出させます。そして側面の骨を切り取り、上顎洞の粘膜が見えるようにします。

上顎洞の骨からこの粘膜を慎重に剥がして、上顎骨と粘膜との間に隙間を作り、そこに人工骨を入れます。

難易度の高い処置ですが、上顎骨の厚みがかなり薄い場合であっても、広範囲に骨の厚みを増やすことができるのが利点です。

ソケットリフト


ソケットリフト

ソケットはインプラントを入れる穴のことで、ソケットリフトはインプラントと上顎洞粘膜の間に人工骨を入れる骨造成(骨増生)法です。

まずインプラントを埋めるために穴を開ける時、上顎洞の粘膜の直前のところまで開けるようにします。そして、残った上顎洞底の薄い骨を取り除き、粘膜を露出させます。

そこから上顎洞粘膜を持ち上げて隙間を作り、人工骨を埋め込んで上顎骨の厚みを増やします。

ソケットリフトは直接目視できない処置のため、同様に難易度が高い方法ですが、サイナスリフトよりも傷が小さく、腫れや痛みが少ないのがメリットと言えるでしょう。

難しい上顎のインプラント治療もインプラントオフィス大通にご相談ください


難しい上顎のインプラント治療もインプラントオフィス大通にご相談ください

今回は、上顎のインプラント治療が難しい理由について解説しました。上顎のインプラント治療は、上顎洞の存在や骨の厚み・硬さなどにより、下顎のインプラント治療より難しい傾向があることをご理解いただけたかと思います。

これらの条件をクリアするために、インプラントの向きの調整、骨造成(骨増生)手術など、様々な手法が開発されていますが、いずれも難しい処置が必要になることもあります。

インプラントオフィス大通には医療法人社団 千仁会の専門医が多数在籍し、最新の設備の下で、信頼できるインプラント治療をご提供いたします。難易度が高い上顎のインプラント治療についてのご相談も、インプラント無料相談で随時受け付けておりますので、札幌でインプラントをお考えの方は、インプラントオフィス大通にぜひご連絡​ください。