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コラム

インプラント治療で用いる麻酔と鎮静法

2024/8/6


インプラントには外科手術が伴うと聞くと、なんだか痛そう・怖そう…と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

たしかに、インプラント治療は顎の骨にインプラント体を埋め込む外科処置が必要ですが、痛みは麻酔によってコントロールが可能です。


また、不安感が強い方には鎮静法を併用することで緊張を和らげることもできます。ウトウトしたリラックス状態のなか、インプラント治療を受けることも可能です。

今回は、そんなインプラント治療における麻酔の種類や鎮静法についてご紹介します。インプラント治療をご検討中の方はもちろん、これまでインプラントの手術に不安を抱えていた方もぜひご参考になさってください。

インプラント治療の麻酔

表面麻酔



表面麻酔は粘膜の表面を痺れさせる麻酔です。ジェル状やスプレータイプの表面麻酔を患部に用い、歯茎を痺れさせることで、注射針が刺す「チクッ」とした痛みを軽減できます。

次に説明する浸潤麻酔(しんじゅんますい)の前に行い、浸潤麻酔時の痛みを減らす目的で使用します。また、えずきやすい方(嘔吐反射の強い方)に対して、感覚を鈍らせる目的で使用する場合もあります。

浸潤麻酔(しんじゅんますい)



浸潤麻酔は歯科治療で最も一般的な麻酔法です。皆さんがイメージされる歯医者の麻酔注射がこれにあたります。インプラント治療においては、インプラント体を埋め込む周囲の歯茎に麻酔注射を行い、術中の痛みを取り除きます。

歯茎から少しずつ麻酔薬が浸透していき、しばらくすると骨の中まで痺れてきます。そうなると、骨の中にインプラント体を埋め込む際も痛みを感じません。

なお、1本〜数本のインプラントを埋め込む手術であれば、浸潤麻酔だけで十分に痛みをコントロールできます。万が一、処置中に痛みがあれば麻酔を追加することも可能です。

伝達麻酔



専門的な分野になるので分かりやすくお伝えすると、伝達麻酔とは、神経の末端ではなく、神経の幹の部分に麻酔薬を注入する方法です。

浸潤麻酔よりも広い範囲に麻酔の効果が広がるうえ、麻酔の持続時間も長いのが特徴です。親知らずの抜歯や複数箇所にインプラントを埋め込む場合など、広い範囲を痺れさせたい時に有効な麻酔法です。

歯科で用いられる代表的な伝達麻酔法について、以下で3つご紹介しましょう。

下顎孔伝達麻酔(かがくこうでんたつますい)



人間の頭部には、上の図のように三叉神経(さんさしんけい)と呼ばれる顔の感覚、上顎と下顎の感覚を伝える神経があり、第一枝(眼神経)領域、第二枝(上顎神経)領域、第三枝(下顎神経)領域に分かれています。

下顎孔伝達麻酔は、第三枝(下顎神経)領域にある下歯槽神経(かしそうしんけい)や舌神経を麻痺させる麻酔法です。あごを通る太い神経の近くに麻酔を行うことで、下の奥歯から舌の前方まで広範囲に麻酔を効かせることができます。

上顎結節伝達麻酔(じょうがくけっせつでんたつますい)

再度上の図をご覧ください。上顎結節伝達麻酔は、第二枝領域にある上顎神経の奥歯へ伸びる枝への伝達麻酔法です。上の奥歯の周囲に広く麻酔の効果が広がります。

眼窩下孔伝達麻酔(がんかかこうでんたつますい)



目の下には、上顎神経の枝の一つである眼窩下神経(がんかかしんけい)の出口である眼窩下孔(がんかかこう)があります。眼窩下孔伝達麻酔では、この部分に麻酔薬を効かせます。

眼窩下孔伝達麻酔を行うと、上の前歯や、その後の小臼歯の辺りにも麻酔の効果が広がり、神経が一時的に麻痺します。

鎮静法について

麻酔によって痛みのコントロールは可能ですが、治療中の緊張感や恐怖心を完全になくすことはできません。そんな時に有効なのが鎮静法です。鎮静法は、インプラント治療時の不安や緊張を和らげ、リラックスして手術を受けていただくための処置です。

治療中の緊張を和らげることで、高血圧症や心不全、甲状腺疾患などの全身疾患をお持ちの方でも、バイタルを安定した状態で治療を受けていただけるようになります。

この鎮静法には、静脈内鎮静法吸入鎮静法の2種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

静脈内鎮静法(セデーション、IVS)



静脈内鎮静法はセデーションIVS(Intravenous Sedation)とも呼ばれ、ミダゾラムなどの全身麻酔薬を血管に注入する鎮静法です。麻酔薬の量を調整することで、鎮静の深さをコントロールします。

手術についてのページで触れていますが、もちろんインプラントオフィス大通では、静脈内鎮静法を使用したインプラント手術も行っていますので、お気軽にご相談ください。

なお、医科ではこの静脈内鎮静法が一般的で、後でご紹介する吸入鎮静法はあまり行われません。このため、静脈内鎮静法とは言わず、単に鎮静法と呼ばれることもあります。

静脈内鎮静法(セデーション、IVS)の特徴

静脈内鎮静法のメリットは、深く確実な鎮静効果です。緊張感がなくなり、リラックスした状態になるため、インプラント治療のように、長時間にわたってお口を開けたままでも苦痛を伴いませんし、呼吸や心拍数などのバイタルを一定に保つことができます。

ただ、鎮静状態が深くなりすぎると呼吸が弱くなってしまうことがあるので、安全に鎮静を行うためには、血圧や心電図、血液中の酸素濃度などを常に監視しておく必要があります。

また、静脈内鎮静法を終えた直後はふらつきなどが生じます。そのため、元の状態に戻るまでの2~3時間は院内で休憩を取る必要があります。

(笑気)吸入鎮静法



(笑気)吸入鎮静法は笑気ガスというほんのり甘い香りがするガスを使用します。笑気ガスと70%以上の高濃度の酸素を混ぜたガスを鼻から吸入し、笑気ガスの不安感や緊張感を緩和する働きによって、リラックスした状態で治療を受けることができます。

(笑気)吸入鎮静法の特徴

(笑気)吸入鎮静法のメリットは安全性が高いことです。ガスの濃度調整が簡単ですし、ガスを止めれば鎮静からすぐに覚めることができます。また、鼻から吸引する鎮静法なので、注射の必要がないこともメリットです。

笑気ガスには、鎮静作用に加えて鎮痛作用もあるので、処置中の痛みを感じにくいことも特徴の一つと言えるでしょう。

インプラント治療時の痛みやストレスを的確にコントロール



今回はインプラント治療時の麻酔や鎮静法について解説しました。インプラントの手術時には必ず麻酔を行いますので、痛みはコントロールが可能です。また、必要に応じて鎮静法を併用することで、痛みだけでなく、緊張感も軽減することができます。

患者さんに寄り添いながら高精度のインプラント治療を提供する」ことを目標とする当院では、治療中の痛みやストレスをコントロールすることは、安全にインプラント治療を受けていただくためにとても大切なことだと考えています。

手術についてのページでもお伝えしているとおり、インプラントオフィス大通では、患者さんの全身的な健康状態を考慮し、手術中は心拍数や血圧などをモニタリングして適切な処置に努めています。

医療法人社団 千仁会の専門医が在籍し、最新の設備を備え、患者さんが安心して治療を受けていただける環境を整えていますので、札幌でインプラントを検討している方は、ぜひインプラントオフィス大通にご相談ください。