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コラム

インプラント治療で神経が傷つくことがある?

2024/9/6


失った歯の代わりとなるインプラントは、大変優れた治療法であり、手術時の安全性も十分確保されています。

ただ、絶対にトラブルが生じないわけではありません。特に、インプラント治療に抵抗感のある方の多くは、外科手術への不安があるのではないでしょうか。

インプラントの手術時におけるトラブルとしては、神経損傷が挙げられます。神経損傷とは、インプラントの手術中に神経を傷つけてしまうことで起こる障害で、口周囲の感覚が鈍くなったり、ピリピリとした痛みが続くこともあります。

では、なぜこのようなトラブルが起こるのでしょうか?今回はインプラント治療における神経損傷の原因や詳しい症状、対処法などについて解説します。

インプラント治療で神経損傷が起こる原因と場所



日本顎顔面インプラント学会の統計によると、インプラント手術によるトラブルで三番目に多いのが神経損傷でした。

ちなみにインプラント手術で最も多いトラブルは上顎洞の炎症で、それに次ぐのは上顎洞の中にインプラントが落ちてしまうケースです。上顎洞とインプラント治療の関係性については、上顎のインプラントが難しい理由のコラムで詳しく解説していますので、併せてご参照ください。

損傷が起きる可能性のある神経

インプラントの手術は歯茎を切開し、ドリルで顎の骨に穴を開け、インプラントを埋め込みます。その際、下歯槽神経(かしそうしんけい)に触れてしまったり、傷つけてしまうことで神経損傷は起こります。

この神経損傷が起きるのは主に下顎で、上顎ではほとんどありません。また、インプラントを埋め込む場所によっては、オトガイ神経舌神経(ぜつしんけい)にダメージを負うケースもあります。

難しい単語が出てきましたので、以降では、口の中の神経について解説していきます。少し専門的な話になりますが、インプラントと関わりの深い神経について、簡単に説明しましょう。

下歯槽神経(かしそうしんけい)



下歯槽神経は下唇の半分、顎先の半分の感覚を感じる神経です。

三叉神経(さんさしんけい)という脳神経から分岐している下顎神経(かがくしんけい)の枝の一つで、三叉神経第三枝(さんさしんけいだいさんし)とも呼びます。



下歯槽神経は、頭蓋骨の底にある卵円孔(らんえんこう)という穴から出て、下顎骨の後方部、上に伸びているところの中央部あたりから下顎骨に入ります。

下顎骨の中に入った下顎神経は、奥歯の下にある下顎管(かがくかん)というトンネルの中を通り、前から数えて4〜5番目の歯根の先から出てきます。そして、下唇や下顎の先に分布します。

舌神経(ぜつしんけい)



舌神経は、舌の前方3分の2あたりの触覚や味覚を感じる働きがあります。

三叉神経の下顎神経の枝の一つですが、先に述べた下歯槽神経とは違い、下顎骨の中には入りません。

舌神経は、下顎骨の裏側に沿って、第二大臼歯と親知らず(第三大臼歯)の内側を通ります。そして、口の底の方まで下がり、そこから上に上がって、舌の前方2/3くらいに分布します。

眼窩下神経(がんかかしんけい)



眼窩下神経は、三叉神経の第二枝である上顎神経の枝の一つです。先ほど、神経損傷が起きるのは主に下顎とお伝えしましたが、眼窩下神経は上顎側の神経です。

目玉が入っている頭蓋骨の窪みのことを眼窩(がんか)といいますが、眼窩下神経は、眼窩の下にある眼窩下孔(がんかかこう)という穴から出て、目の下から鼻の側面や上唇に分布します。

この眼窩下神経には、上顎、頬、鼻あたりの感覚を感じる働きがあります。

インプラント手術による神経損傷とは

感覚の痺れ



神経に損傷が起きると、インプラント手術を行った周囲の感覚が鈍くなる知覚鈍麻(ちかくどんま)が起こります。また、稀に感覚が全くなくなる知覚麻痺(ちかくまひ)が起こる場合もあります。

下歯槽神経が傷つくと、下唇や下顎の先のあたりに触れた時の感覚が鈍くなり、舌神経を損傷すると、舌の感覚や味覚が鈍くなります。

神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)

神経障害性疼痛とは、神経の損傷や機能障害によって引き起こされる慢性的な痛みです。

実際の症状は、ピリピリもしくはジリジリとした不快感に加え、熱いものや冷たいものに敏感になる感覚異常などです。熱さを感じる灼熱痛や、強い痛みが出ることもあります。

インプラント手術時の神経損傷を防ぐ工夫



ここまでインプラントの神経損傷について解説してきました。もしかすると、皆さんの中には心配になる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、インプラントの手術によって神経損傷が起こる可能性はありますが、歯科医師の技術や経験、先進機器によって限りなくゼロに近づけることは可能です。

インプラント治療は正確な診断と、事前の治療計画を精密に行うことが大切です。例えば、下歯槽神経は骨の中を通っていますので、レントゲン写真やCTを撮影すれば、どこに位置しているのか一目で確認できます。

そして実際の手術では、事前の計画をもとに、下顎管を傷つけない位置、深さ、向きにインプラントを埋め込むことで、神経の損傷を回避しています。



インプラントオフィス大通では、手術の安全性を高めるため、全ての症例にCTの撮影データをもとに作製したガイドサージェリーを用いています。インプラントを狙った位置にピンポイントで埋入することで、より正確な手術が行えるようになります。

神経損傷のリスクが気になる方も、安心してご相談ください



今回は、インプラント治療で神経を傷つける可能性や原因などについてお話ししました。

神経が傷つく可能性があると聞くと、不安に思われる方もいらっしゃると思いますが、インプラント治療に関係する神経の種類ははっきりしていますし、レントゲン写真やCTで神経の位置を確認することで、神経損傷のリスクを十分に減らすことができますので、ご安心ください。

インプラントオフィス大通は、インプラント専門の歯科クリニックです。インプラントの知識や手術経験が豊富な専門医が多く在籍しておりますし、お口の構造についても熟知しています。札幌でインプラントをご検討中の方、また手術時のリスクが心配な方も、インプラントオフィス大通にぜひご相談ください。