インプラント治療後に歯茎が下がってきたら…その原因と対策をチェック
2024/11/14
歯茎が下がることを歯科用語で歯肉退縮(しにくたいしゅく)といいます。歯肉退縮は天然の歯だけでなくインプラントでも起こります。
インプラントに歯肉退縮が起こると、骨の中に埋まっていたインプラントが露出するため、見た目の美しさを大きく損なってしまいますし、様々な弊害も出てきますので、きちんと予防しておきたいところですよね。
そこで今回は、インプラント治療と歯肉退縮の関係性や、その原因や対処法についてご紹介します。
インプラント治療後に歯茎が下がる原因とは?
インプラント周囲炎
まず、インプラント治療後に歯肉退縮が起きる原因として考えらえるのが、これまでのコラムでもよく登場するインプラント周囲炎です。
インプラント周囲炎は、インプラント周囲の歯茎や骨に炎症が起きている状態です。歯周病に近い症状が起こるためインプラントの歯周病と言われることもあります。
インプラントは人工歯のため、天然の歯よりも抵抗力が低く、細菌に感染しやすいので、インプラント周囲炎には特に注意しなくてはなりません。事実、インプラントの寿命を縮めてしまう原因のトップが、このインプラント周囲炎によるものです。
インプラント周囲炎が進むと、インプラントを埋入した周りの骨が減り、骨の上にある歯茎も同時に下がるため、インプラントが露出するようになってしまいます。
歯槽骨(しそうこつ)の減少
歯を支える骨を歯槽骨(しそうこつ)といいます。歯を抜くと、歯を支えている歯槽骨も同時に減少します。
前歯部はもともと骨が薄く、なおかつ歯槽骨のてっぺんの位置が低いという特性があるため、骨が減少すると歯茎が退縮しやすい傾向があります。
歯茎が下がってインプラントが露出すると、金属の部分が見えて見た目が悪くなります。特に前歯は目立ちやすい部分なので、人の目が気になって大きく口を開けたり、笑うことができなくなるかもしれません。
インプラントの位置や太さ
インプラントを埋入するには、インプラントの表側と裏側にそれぞれ1.5ミリずつの骨幅が必要です。
しかし、挿入する位置やインプラント体の太さによっては、骨の厚みに不足が生じる場合があります。そうなると骨が侵食し、同時に骨を覆っている歯茎も退縮してしまいます。
骨の厚みが不足する場合は、骨造成(こつぞうせい)という処置を行います。骨造成については、インプラント治療における骨造成(骨増生)とはのコラムで詳しく解説していますので、興味のある方は、併せてご参照ください。
歯茎が下がる他の理由
ここまでは、インプラントに関係する歯茎が下がる原因についてお話してきましたが、これら以外にも歯茎が下がってしまう原因はあります。
不適切な歯磨き
まず挙げられる原因は、不適切な歯磨きです。これは天然の歯でも同様ですが、固い歯ブラシでゴシゴシと歯肉を強く擦り続けと、エナメル質がすり減り、歯茎が下がってしまいます。
特にインプラントを入れた後は、注意して歯磨きをする必要があります。インプラントの歯磨き方法と注意点のコラムで、正しいインプラントの歯磨きの仕方やデンタルフロスの活用法などを解説していますので、ご覧になってみてください。
加齢
年齢を重ねると筋力が低下したり、皮膚のたるみ目立つようになるように、加齢とともに歯茎も徐々に痩せていきます。
若い頃はピンと張りのある健康な歯茎でも、加齢による影響を受けて後退してしまうことがあります。
歯周病
提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科のコラム、放っておくと全身疾患も?歯周病について詳しく解説でもお伝えしていますが、実は20歳以上の日本人の6割以上が歯周病にかかっています。もはや歯周病は国民病とも言えるでしょう。
天然の歯でも、歯周病が進行すると炎症によって歯槽骨が侵食され、骨を覆っている歯茎は後退していきます。
もしインプラントの周囲の歯が歯周病になって感染が広がると、上でお伝えしたインプラント周囲炎になるリスクが高まります。そうなると、これもお伝えしたとおり、インプラントを支える骨に炎症が波及して、歯茎が下がってしまいます。
インプラント治療後の歯肉退縮を防ぐ方法
噛み合わせの調整
噛み合わせの力が強いと、インプラント周囲の骨や歯茎に負荷が掛かるため、歯茎が下がりやすくなります。
そこで噛み合わせの調整を行い、噛む時の負担が偏らないようにすることで、歯肉退縮を予防することができます。
歯磨き方法の見直し
ブラッシングの力が強いと、歯茎に傷がつき、歯肉退縮の原因となります。歯茎の退縮を防ぐには、正しい方法で歯を磨くことが大切です。
インプラントの歯磨き方法と注意点のコラムでもお伝えしていますが、インプラントを長持ちさせるためにも、歯科医院で歯磨き指導(TBI:Tooth Brushing Instruction)を受け、日々の歯のセルフケアにしっかり活かしていきましょう。
歯科医院でのメンテナンス
メンテナンスとは、インプラントを含む歯科治療が終わった後の予防ケアです。一般的に3〜6ヶ月に1回の定期的なメンテナンスが推奨されています。インプラントオフィス大通では、患者さんの状態に合わせ、インプラント治療後に1~3ヵ月ごとの定期健診受診をおすすめしています。
歯垢や歯石は歯周病の原因なので、放置すると歯茎が下がる原因となります。また、口腔内を清潔に保てなくなると、インプラント周囲炎のリスクも高くなってしまいます。
歯茎のトラブルを防ぐには、歯科医院の専用機器によるPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)で歯石や歯垢を除去し、清潔な口内環境を維持することが大切です。
また、定期的にメンテナンスを受けることで、口腔内トラブルの早期発見・治療にもつながりますので、忘れずに歯のメンテナンスを受けるようにしてください。
抜歯時の骨再生治療
抜歯とインプラントの埋入を同時に行う場合、骨が薄いとインプラント治療後に歯肉退縮が起こる可能性が高くなります。
そのような症例の場合は、インプラント治療における骨造成(骨増生)とはのコラムで解説している、GBR(Guided Bone Regeneration:骨再生誘導法)を抜歯と同時に行い、歯槽骨が吸収されにくい状態となるように整えていきます。
インプラントの周囲に1.5ミリ以上の骨が残るように、位置や太さを調整することも歯肉退縮のリスクを減らすポイントです。
下がってしまった歯茎の治療法
歯茎が下がらないようにする予防法について解説してきましたが、すでに下がっていまった歯茎はどうしたら良いのでしょうか。
下がった歯茎を修復する治療法はいくつか存在しますが、少し専門的な内容になるため、ここでは歯肉移植術(しにくいしょくじゅつ)や歯肉弁移動術(しにくべんいどうじゅつ)などの歯周外科治療について簡単にご紹介します。
歯周外科治療の詳細については、提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科の歯周組織再生療法とは?のコラムで解説しておりますので、興味のある方は、併せてご参照ください。
歯肉移植術
歯肉移植術(しにくいしょくじゅつ)は、お口の中の健康な部分から歯茎を採取し、歯肉退縮を起こしているところに移植する処置です。
移植した歯茎に強い力が加わると、定着力が弱まる可能性があるため、周囲の粘膜の緊張を和らげる口腔前提拡張術(こうくうぜんていかくちょうじゅつ)という処置も、加えて行うことあります。
歯肉弁移動術
歯肉弁移動術(しにくべんいどうじゅつ)は、歯肉が退縮している周囲の歯茎を切開して剥離し、伸ばして歯肉退縮部分を覆うようにする処置のことをいいます。
インプラント治療後のアフターケアを忘れずに、いつまでも健康な歯茎を
インプラントは虫歯にならない?必要なケアは?のコラムでもお話ししたとおり、インプラントは虫歯にはなりませんが、決してメンテナンスフリーではありません。
今回お伝えしたように、アフターケアを怠ってしまい、歯茎が下がってインプラントが露出すると、口を開けた時に黒っぽい金属が見えるようになります。そうなると、審美性が損なわれ、人前で口を開けることに抵抗を感じるようになったり、笑顔に自信が持てなくなるかもしれません。
インプラントオフィス大通は、医療法人社団 千仁会に所属し、インプラントに関する豊富な知識に加え、多くの治療経験があるクリニックです。患者さんの状態を的確に把握し、手術から術後のアフターケアまで一貫してサポートいたしますので、インプラント治療後の歯肉の状態についてご質問やご相談のある方も、インプラントオフィス大通にぜひお越しください。