インプラントを入れる前に歯周病の治療が必要な理由とは?
2024/11/7
これまでもインプラントコラムでお伝えしてきたように、インプラントは健康な歯を削らなくて済むため、ブリッジや入れ歯と比べて、他の歯への負担を抑えることができます。さらに、天然歯と同じように自然な感覚で噛むことができ、見た目も美しく自然な仕上がりになるというメリットがあります。
優れた点が多いインプラントですが、一方で歯周病に弱いという注意すべき特性も持ち合わせています。歯周病に似た症状であるインプラント周囲炎になると、最悪の場合はインプラントが抜け落ちてしまうこともあるのです。
口腔内の健康を維持するためにも、そしてインプラントを長持ちさせるためにも、しっかりと歯周病を治療しましょう。今回は、インプラントと歯周病の関係について説明します。
歯周病とは
歯周病は歯周組織(歯肉や歯を支える骨)に炎症が起こる感染性の疾患です。歯周病の進行には段階があり、歯ぐきに炎症が起きている「歯肉炎」と、歯を支える骨が溶けてしまう「歯周炎」に分かれます。
歯周病は、進行すると歯がグラグラと動き、最終的には歯が抜け落ちてしまう病気です。しかし歯周病は自覚症状が乏しいため、なんだかおかしいな…と気づいた時にはかなり進行していることも少なくありません。
歯を失う一番の理由は歯周病
実は、厚生労働省の発表にもあるとおり、歯を失う原因の第1位は虫歯ではなく歯周病なのです。さらに、日本人の成人の半数以上は歯周病にかかっていると言われます。もっと早く治療すれば…と後悔する前に治療を開始しましょう。
歯肉炎
早速歯肉炎と歯周炎の解説から始めましょう。詳しくは、提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科の歯肉炎と歯周炎って何が違うの?のコラムでも解説していますので、興味のある方は、併せてご参照ください。
歯肉炎は、上でもご説明したように、歯茎に炎症が起きていますが、骨に影響はない状態であり、軽度の歯周病の状態です。歯肉炎であれば、歯磨きや歯間ブラシなどを見直すことで健康な状態に改善が可能です。
慢性歯周炎
歯肉炎が放置されると慢性歯周炎に進行します。歯茎だけでなく、歯を支える骨にも影響が出てきます。また、歯ぐきの腫れや出血などのほか、歯茎が退縮して歯根が露出することもあります。
進行性歯周炎
歯周炎が進行すると、歯茎の炎症が悪化し、歯周ポケットが深くなります。歯肉と骨の間の組織が破壊され、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)が減少することで、歯がグラグラと動くようになってしまいます。口臭や、噛むと痛いといった症状も現れます。
歯周病があるとインプラント治療が難しいのはなぜ?
骨の状態が悪くなる
インプラントは、オッセオインテグレーションにより、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込むため、十分な骨の量と厚みが必要です。しかし、歯周病が進行すると歯周組織や骨が破壊されるため、骨の厚みが不足し、インプラントの安定性が低下する恐れがあります。
歯周病の治療が完了しているなら、コラムでもご紹介した骨造成により、骨を増やすことも可能です。
しかし、歯周病の治療が終わっていない場合は、骨の吸収が進み、さらに骨が痩せ細ってしまうので、インプラントを入れるなら、先に歯周病の治療を行う必要があるのです。
細菌感染のリスクが上がる
口腔内に虫歯や歯周病があると、インプラントを埋入する際に、細菌感染が起きるリスクが増えてしまいます。感染したインプラントでは、骨との結合(オッセオインテグレーション)も阻害され、顎の骨に良い状態で定着できません。
治癒が遅くなる
仮に、運良くインプラントの埋入が成功したとしても、歯周病が治っていなければ、冒頭でもお伝えしたインプラント周囲炎を発症してしまう可能性があります。さらに、術後の治癒が遅れる場合もあるため、インプラント治療は歯周病の治療を終えてから行います。
歯周病の治療方法
PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)
PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)とは、歯科医師や歯科衛生士による専門機器を使用した歯の清掃のことです。
日々の歯磨きなどのセルフケアでは落とせない歯石や歯垢を除去し、歯周ポケット内をきれいに清掃することで歯茎の炎症を抑えます。虫歯や歯周病の予防・改善に効果的なケアです。
抗菌治療
歯周病の進行を抑えるために、抗菌薬や抗生物質を用いることがあります。歯周ポケットが深い場合や感染が進行している場合に使用します。
定期検診とメンテナンス
歯周病の治療が一通り終了した後は、定期的な検診とメンテナンスに移行します。歯周ポケットの状態を定期的にチェックして、クリーニングを受けることで口腔内の細菌が減少させることができます。
定期的に検診を受けることで、健康な歯茎を保つことができるので、歯科医院での定期検診とメンテナンスは欠かさないようにしましょう。
歯周病を治して口腔環境を整えてから、確かなインプラント治療を
歯周病の主な原因は、歯垢(プラーク)と歯石による細菌の増殖ですが、そのほかにも喫煙や遺伝、ストレス、栄養不良などとの関わりも指摘されています。
提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科の放っておくと全身疾患も?歯周病について詳しく解説のコラムでもお伝えしていますが、近年の研究では、歯を失うだけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼすことが明らかになってきました。
歯周病は、呼吸器疾患や動脈硬化、心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの原因になることもあるため、お口の中の問題だけでなく、全身の健康に関わる病気と言えます。だからこそ、しっかりと歯周病治療に取り組むことが大切です。
インプラントオフィス大通では、綿密なカウンセリングと最新機器による検査により、患者さん一人一人の口腔環境や全身の健康状態を的確に把握したうえで、インプラント治療を行います。インプラントや歯周病のことなど、気になることやご質問がある方は、インプラントオフィス大通にお気軽にご相談ください。