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コラム

インプラント治療後にMRIは受けられる?

2025/1/12


現代の医療では様々な検査技術が活用され、病気を見つけ出しています。歯科ではレントゲン写真に代表される画像検査が多いですね。

さて、そんな画像検査の一つに「MRI」という検査があります。MRIは強力な磁力を使う画像検査なので、ペースメーカーや人工関節などの金属が体内にある場合、MRI検査の強い磁場によって、金属が移動したり発熱したりする危険性があります。そのため、MRIの検査前には、体内に金属がないかどうかの厳重なチェックが行われるのが一般的です。

ここで、「MRI検査の際、歯科治療で使われるインプラントはチェックに引っかからないの?」という疑問を持たれる方もいるかもしれません。そこで今回は、インプラント治療とMRIの関係についてご紹介します。

MRIとは?



私たちの体の中は、普段自分の目で見ることができません。しかし、病気になってしまった時、その原因を知るためには、体の中を詳しく調べる必要があります。そんな時に活躍するのがMRI検査です。

MRIとは、強力な磁石と電波を使って体の内部を画像化する検査方法です。Magnetic Resonance Imagingの頭文字を取った言葉で、日本語では磁気共鳴画像検査と呼ばれています。

強い磁石でできた筒の中に入り、磁石の力で人体に含まれる水分や脂肪の分布を調べて断層画像化します。レントゲンやCTと違い、MRIは放射線を使わないため、被ばくの心配がないのが特徴です。

また、造影剤と呼ばれる薬を注射や点滴で体に入れることで、通常よりもさらに詳細な情報を得ることができる場合もあります。

この検査で脳や脊髄、肩や膝などの関節、血管、子宮など体の様々な部位の病気を発見できます。

MRIを受けてはならない人



先ほどお話ししたように、MRI検査は、強力な磁石の力を使って体の内部を詳しく調べる検査です。体内に金属があると思わぬトラブルを引き起こす可能性があるため、全ての方が受けられるわけではありません。

まず、心臓の動きを助けるペースメーカーを使用されている方は、MRIの強力な磁場によって誤作動を起こし、最悪の場合、命に関わる危険性があるため、残念ながらMRI検査を受けることができません。

同様に、脳動脈瘤の治療などで血管を止めるために金属製のクリップ(血管クリッピング)を使用されている方も注意が必要です。

MRIで気をつけなければならない歯科治療とは?

磁石の性質を持つ、磁性のある金属が体内に埋め込まれている方も原則としてMRI検査は受けられません。

磁性のある金属とは、具体的には鉄、コバルト、ニッケルなどです。これらの金属は、歯科治療でも使われる機会があるので注意が必要です。

矯正治療や詰め物には注意



例えば、歯並びを整える矯正治療。その中でも、ワイヤーを使った矯正は、ワイヤー部分に磁性を持つ金属が含まれる製品が使われているのが現状です。

一般的な虫歯治療で使用される銀歯の詰め物や被せ物にも、磁性を持つ金属が含まれている場合があります。特に、古い治療法や保険診療で使用される安価な金属には注意が必要です。

また、詳しくは後述しますが、インプラント治療でもインプラントと入れ歯を固定させる磁性アタッチメントという装置を使用するケースがあります。これは文字どおり磁石の力を利用しているため、MRI検査に影響を及ぼします。

インプラント治療とMRIについて

では、ここからは今回のテーマであるインプラント治療とMRIについて解説します。

基本的にMRI検査は受けられる



結論から言うと、ほとんどのインプラント治療はMRI検査に影響を与えません。

なぜなら、インプラント治療ではフィクスチャーと呼ばれる人工歯根の部分に、主にチタンという金属が使用されるからです。チタンは磁性がない金属なのでMRIには影響がありません。

以前、オッセオインテグレーションのコラムでもお伝えしたように、インプラントはチタンと骨が結合する性質を利用して、顎の骨に固定しています。

そして、フィクスチャーの上に取り付ける人工歯(上部構造)には、一般的にセラミックや金合金などが使用されます。セラミックは陶器と同じでそもそも非金属です。

金合金は、金・銀・銅などを混ぜ合わせたものですが、主成分の金は非磁性体のため、こちらもMRI検査には影響しません。

磁石を使ったインプラント治療は注意が必要



ただし、例外もあります。インプラントオーバーデンチャーのコラムで説明した、マグネットデンチャーと呼ばれるタイプのインプラント治療を受けている方は注意が必要です。

インプラントオーバーデンチャーは、数本のインプラントを土台として、その上に総入れ歯や部分入れ歯を固定する治療法です。この治療法では、入れ歯を安定させるために、インプラントや入れ歯に小さな磁石(磁性アタッチメント)を取り付けることがあります。

お伝えしたように、磁石はMRI検査に影響を及ぼします。そのため、マグネットデンチャーを使用している方は、MRI検査の前に必ず歯科医師に相談しましょう。

もしインプラントを理由にMRI検査を断られてしまったら?

まずはインプラント治療を受けた歯科医院に連絡を



MRI検査を断られたことを、まずはインプラント治療を受けた歯科医師に相談してみましょう。

インプラント治療では、磁石に反応するような金属が使用されていないことを歯科医師は一番よく理解しています。

そして、インプラント治療で磁性のある金属を使っていないことを記載した診療情報提供書を作成してもらいましょう。この書類をMRI検査を受ける医療機関に提出すれば、検査を受けられる可能性が高まります。

上部構造だけ取り外す



インプラントの人工歯(上部構造)が、ネジなどで取り外し可能な設計になっている場合、MRI検査の前に上部構造を一時的に取り外すという方法もあります。

上部構造に磁性を持つ金属が使われている場合には、有効な手段です。

材料についての説明

インプラントの材料を医師や放射線技師がご存知ない可能性もあります。

そうした場合には、インプラント治療では主にチタンが使用されており、チタンは磁性を持たないため、インプラントはMRI検査に影響を与えないことを説明してみるのも一つの方法です。

ただし、専門的な判断は医師に委ね、無理に検査することのないようにしましょう。

正しい知識でMRI検査の不安を解消



今回は、インプラント治療とMRI検査の関係についてお話ししました。MRI検査では、磁石に反応する金属が体内にあると検査に影響が出たり、思わぬトラブルを引き起こしたりする可能性があります。

お伝えしたように、インプラント治療で主に使用されるチタンは磁石に反応しないため、基本的にはMRI検査を受けることができます。

ただし、インプラントと入れ歯を固定させる磁性アタッチメントを使用している場合や、古いインプラント治療で磁性体金属が使われている場合などは注意が必要です。

歯科治療の内容の把握がポイントに



MRI検査を受ける際は、これまでに受けた歯科治療の内容を、できる限り正確に伝えることが大切です。インプラント治療を受けている、矯正治療中である、過去に大きな虫歯治療を受けたといった情報は、忘れずに伝えるようにしましょう。

札幌のインプラントオフィス大通は、インプラント治療をはじめ、様々な歯科治療に精通した歯科医師が在籍する歯科医院です。インプラント治療に関して、MRI検査のことだけでなく、治療方法や費用、期間など、どんな小さなことでも気になることがあれば、ぜひお気軽にインプラントオフィス大通へご相談ください。