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コラム

インプラントへのタバコの影響

2025/3/26


インプラント治療は、歯を失った場合の治療法のひとつとして、近年広く用いられるようになりました。正しくインプラントのメンテナンスを行えば、10年後でも9割以上が機能しているというデータもあり、長期的に見ても良好な結果が期待できる治療法です。

ただ、インプラント治療は必ずしも成功するわけではありません。治療の成否には様々な要因が関係していますが、その中でも特に注意が必要なのが喫煙習慣です。

タバコを吸っていると、インプラントに悪影響を及ぼすことが明らかになっています。そこで今回は、喫煙がインプラント治療へどのように影響するのか、詳しくご紹介します。

喫煙者と非喫煙者のインプラント失敗率の比較



インプラント治療を検討するうえで、喫煙が治療の成果にどのような影響を与えるのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

日本歯周病学会の禁煙推進委員会が監修した喫煙の歯周組織に対する影響には、喫煙とインプラント治療の成功率に関するデータが掲載されています。

これによりますと、インプラントの失敗率は喫煙者の方が高く、なんと非喫煙者の2倍になったとの記述があります。

このデータからもわかるように、タバコを吸う方とそうでない方を比べると、タバコを吸う方はインプラント治療が失敗しやすくなることが明らかになっているのです。

インプラントへのタバコの害

では喫煙がインプラントにどのような悪影響をもたらすのか、具体的にご説明しましょう。

手術後の治りが悪くなる



タバコに含まれるニコチンには、血管を縮める作用があります。

インプラント手術後は、体が手術による傷を治そうと、様々な細胞を血管を通して運びます。しかし、喫煙によって血管が収縮すると、血液の流れが悪くなり、傷の修復に必要な成分や、細菌感染を防ぐための免疫細胞が十分に届かなくなってしまうのです。

この結果、インプラント手術後の治りが悪くなり、インプラントの成功率を低下させてしまいます。

骨との結合を阻害する



インプラントはチタンでできており、チタンと骨が強く結合するオッセオインテグレーションを利用して固定します。

現在のインプラント治療は、このオッセオインテグレーションがベースとなっており、オッセオインテグレーションが上手くいくには、チタンの周りに新しい骨の細胞が作られなければなりません。

しかし、喫煙によって血管が縮むと、新しい骨を作るのに必要な栄養や酸素が届きにくくなり、骨との結合を妨げられる可能性があります。これもまた、インプラントの成功率を下げる要因となるのです。

インプラント周囲炎になりやすくなる



一度骨と結合したインプラントが、残念ながら抜けてしまうことがあります。

その原因のトップにあるのが、コラムでもご紹介したインプラント周囲炎という、インプラント特有の歯周病のような病気です。このインプラント周囲炎は、インプラントの周りに付着した細菌が原因で起こります。

唾液には、お口の中の汚れを洗い流す洗浄作用、細菌の活動を抑える抗菌作用、傷ついた歯肉を治す治癒促進作用など、大切な役割がありますが、喫煙によって唾液の分泌量が減ると、唾液の各作用が低下し、インプラント周囲炎のリスクが高まるのです。

より成功率を下げるリスクの高い喫煙者

喫煙がインプラント治療の成功率に影響を与えることは、これまでご説明してきたとおりですが、以下のような方は、さらにインプラントの成功率を下げてしまいます。

1日の喫煙本数が多い方



1日の喫煙本数が多いほど、インプラント治療への悪影響は大きくなります。一般的に、1日に21本以上タバコを吸う方はヘビースモーカー(重度喫煙者)と呼ばれます。

なお、1日1~10本吸う方は軽度喫煙者、11~20本を吸う方は中度喫煙者といいます。

日本国内で見ると、喫煙者の男性の約11%、女性の約3%がヘビースモーカーだと言われているそうです。また、ヘビースモーカーの方は、軽度・中度喫煙者と比較して、インプラント治療が上手くいかない可能性が約3倍高いことがわかっています。

喫煙歴が長い方



喫煙本数だけでなく喫煙歴も影響を与える可能性があります。長期間にわたる喫煙は、歯ぐきや骨などの組織に慢性的なダメージを与え、インプラント治療の成功率を低下させる可能性があります。

糖尿病などの基礎疾患のある方



糖尿病、貧血、リウマチなといった疾患をお持ちの方が喫煙すると、相乗効果によって、さらにリスクが高まる懸念があります。

歯周病が進行している方



喫煙は歯周病を悪化させる主要な原因の一つです。歯周病が進行している方は、インプラントを支える骨が弱くなっている可能性があり、注意が必要です。

インプラントを入れる前に歯周病の治療が必要な理由とは?のコラムでもお話ししたように、歯周病があると、インプラント治療が難航する可能性が高まるので、先に歯周病の治療を行わなくてはなりません。

喫煙者の方は禁煙をおすすめします



インプラント治療を成功させ、長持ちさせるためには、禁煙が非常に大切であることは、これまでの説明からもお分かりいただけるかと思います。喫煙されている方は、健康の点からもぜひ禁煙をおすすめします。

もちろん禁煙は簡単ではありません。ご自身の力だけで難しい場合は、禁煙補助薬(ニコチンパッチやガムなど)を活用したり、医療機関の禁煙外来を受診したりすることも有効な手段です。

禁煙すると、禁煙開始から1ヶ月から1ヶ月半で歯肉の炎症は改善し、6ヶ月以上続けると歯周組織全体の炎症も減少するというデータがあります。インプラント治療の前に禁煙をすれば、歯周組織の炎症が緩和できるので、良好な状態で治療に臨むことができるでしょう。

どうしても禁煙が難しい場合は

しかし、中にはインプラント治療までにあまり時間がない方や、禁煙にトライして挫折してしまう方もいらっしゃいます。

喫煙歴や1日あたりのタバコの量にもよりますが、そのような方は、少なくともインプラント手術の3~4週間前から、手術後は3~6ヶ月程度禁煙することが望ましいと言えます。

この期間だけでも禁煙することで、手術後の傷の回復を助け、インプラントと骨が結合する過程を良好にする効果が期待できます。

健康な口腔環境で適切なインプラント治療を



今回は、喫煙のインプラント治療への悪影響についてご説明しました。ただ、「喫煙者の方がインプラント治療を諦めなければならない」ということではありません。禁煙することで歯茎の血流は改善し、インプラント治療に適した状態に近づけることができます。

インプラントの成功率を高めるためにも、そしてご自身の健康のためにも、治療に入る前に禁煙を考えてみましょう。

医療法人社団 千仁会インプラントオフィス大通は、インプラント治療に精通した専門医が多数在籍し、綿密なカウンセリングを通じて、治療だけでなく、口腔環境に影響する生活習慣についてもアドバイスをさせていただきます。

喫煙習慣があってインプラント治療に不安を感じている方も、札幌でインプラント治療をお考えの際は、インプラントオフィス大通へお気軽にご相談ください。