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コラム

インプラントのスクリュー固定とセメント合着とは?固定法の違いを紹介

2025/4/15


虫歯や歯が欠けた際の治療で、被せ物(クラウン)を使った経験がある方もいらっしゃるでしょう。ご自身の歯に被せ物をする際は、通常、セメントと呼ばれる歯科用の接着剤で取り付けます。

では、人工の歯根を用いるインプラント治療の場合、どのようにして歯の頭の部分(上部構造)を取り付けているのでしょうか?

今回は、インプラントの上部構造の固定方法について、代表的な2つの種類であるスクリュー固定とセメント合着をご紹介します。

インプラントの上部構造の取り付け方法



これまでもインプラントコラムでご説明してきましたが、インプラント治療では、顎の骨に埋め込まれたフィクスチャー(インプラント体、人工歯根)の上に、アバットメントという土台となる部品を取り付けます。そして、そのアバットメントの上に、歯の形をした上部構造(人工歯)が装着される仕組みです。

冒頭でも触れたように、このアバットメントと上部構造を固定する方法には、主に以下の2種類があります。


  • スクリュー固定ネジ(スクリュー)で固定する方法

  • セメント合着 :歯科用セメント(接着剤)で固定する方法


それぞれ詳しく見ていきましょう。

スクリュー固定とは



まず、スクリュー固定についてご紹介しましょう。スクリュー固定とは、ネジを使って上部構造を取り付ける方法です。

スクリュー固定用の上部構造には、あらかじめネジを通すための小さな穴であるアクセスホールが設けられています。

治療の際は、アバットメントに上部構造を被せ、アクセスホールからスクリューを挿入します。インプラントドライバーという専用の工具を使ってスクリューを締め込み、上部構造を固定するのです。

固定後、アクセスホールはコンポジットレジンという歯科用のプラスチック材料で塞ぎ、穴を目立たなくします。

コンポジットレジンについては、提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科の治療に欠かせない歯科材料『コンポジットレジン』って?のコラムで詳しく解説しておりますので、興味のある方は併せてご参照ください。

セメント合着とは



セメント合着は、ご自身の歯に被せ物を取り付けるのと同様に、歯科用のセメント(接着剤)を使って上部構造をアバットメントに固定する方法です。

上部構造の内面にセメントを塗り、アバットメントに被せて接着します。セメントが完全に固まると上部構造はアバットメントにしっかりと固定されます。

スクリュー固定のメリット

ここからは、各々の固定法の特徴を見ていきましょう。まずはスクリュー固定からです。

スクリュー固定の最大のメリットは、上部構造を取り外すことができるという点です。なぜ、上部構造を取り外せるのがメリットになるのかというと、以下のような理由があるからです。

修理や再製作がしやすい



インプラントの上部構造は丈夫に作られていますが、強い力がかかった場合などに、欠けたり割れたりする可能性はゼロではありません。

スクリュー固定であれば、もし上部構造に問題が生じた際、比較的簡単に取り外すことができます。そのため、アバットメントを傷つけることなく、上部構造の修理や作り直しが可能です。

メンテナンスがしやすい



インプラントを長く保つために大切なのが、コラムでもご紹介したインプラントを入れた後のメンテナンスです。

スクリュー固定の場合、必要であれば上部構造を取り外して、インプラント周囲の状態を詳しく確認したり、清掃したりすることが可能です。

アバットメントに問題が起きても対応しやすい



万が一、上部構造を支えるアバットメント自体に緩みや不具合が生じた場合でも、上部構造を外すことでアバットメントの締め直しや調整、交換といった対応がしやすくなります。

アバットメントについては、インプラント治療の縁の下の力持ち!アバットメントの重要性とはのコラムで詳しく解説しておりますので、興味のある方は併せてご参照ください。

スクリュー固定のデメリット

もちろん、スクリュー固定はメリットばかりがあるわけではありません。

コストがかかりやすい



スクリュー固定の場合、アクセスホールを設けたり、ネジで固定したりするなど、製作や処置にやや手間がかかります。そのため、セメント合着に比べて治療コストが高くなる傾向があります。

緩む可能性がある

ネジが時間とともに緩むことがあるように、固定しているスクリューが緩む可能性もあります。スクリューが緩むと上部構造に多少のがたつきが生じることがあります。

アクセスホール周囲の破損リスク



アクセスホールの周りは構造的に薄くなるため、強い力がかかった場合に、アクセスホール周辺が欠けるリスクも考えられます。

セメント合着のメリット

続いて、セメント合着のメリットについて解説しましょう。

見た目が美しい



セメント合着の場合は、上部構造にアクセスホールは必要ありません。歯全体を均一な色で作れるため、天然歯に近い美しい見た目を実現しやすくなります。

上部構造への負荷を軽減できる場合がある



もしインプラントに過度な力がかかり続けた場合、まずセメント部分が力を吸収し、状況によってはセメントが先に破損して上部構造が取れます。

これにより、インプラント本体や上部構造自体への大きなダメージをある程度軽減できると考えられています。

緩みにくい

スクリュー固定と違い、セメント合着は接着して取り付けるので、緩みが生じにくいのもメリットといえます。

コストを抑えやすい

アクセスホールやネジ止め、穴埋めの必要がないため、セメント合着の方が構造や手順は比較的シンプルです。これにより、スクリュー固定に比べて治療コストを抑えやすい傾向があります。

セメント合着のデメリット

もちろんセメント合着の方にもデメリットがあります。

取り外しが難しい



一度セメントで固定すると、基本的には上部構造をなくさなければ取り外すことができません。

修理やメンテナンスのために外したいと思っても、容易には外せない点がデメリットと言えるでしょう。

セメントが劣化すると外れる可能性がある

長年の使用によりセメント自体が劣化すると、経年変化の影響で接着力が弱まり、上部構造が外れてしまう可能性があります。

患者さんの状態に応じてインプラントの最適な固定方法を



上部構造の取り付け方法には、ネジ止めするスクリュー固定、セメントで接着するセメント合着の2種類があり、お伝えしてきたように、各々の固定法ならではの特徴があります。

いずれの方法にもメリット・デメリットがあるので、どちらが一方的に優れていると断言することはできません。近年では、メンテナンスのしやすさからスクリュー固定が選ばれるケースも見られますが、最適な固定方法は、お口の中の状態、治療する歯の部位によって異なります。

札幌のインプラントオフィス大通では、精密な検査・診断に基づき、患者さんお一人お一人の状況やご要望を丁寧にお伺いしたうえで、より適した固定方法をご提案するよう努めております。

インプラントの上部構造の固定方法について、「自分の場合はどちらが良いのだろう?」「もっと詳しく話を聞きたい」とお考えでしたら、どうぞ札幌のインプラントオフィス大通までお気軽にご相談ください。